大判例

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東京地方裁判所 昭和28年(ワ)5394号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔事実〕原告は本件建物敷地の所有者で地上建物所有者である被告に対し敷地の不法占有を理由として明渡を求めた。被告は本件建物を買受ける前後の頃、原告に対し係争土地の賃借を申込んだところ原告はその賃貸借を承諾したが、契約内容として権利金三万円、賃料坪当り一ケ月二十円を主張したので被告においてその減額を申込んだ結果契約条件が確定しないまま推移したに過ぎず、原被告間には当時統制額以内の賃料を以つて賃貸借契約が成立したと抗争した。

〔判断〕原告敗訴。判決はつぎに掲げる理由で本件土地の賃貸借契約の成立を認めた。曰く。

「……を綜合すれば、被告は本件建物を買受けた後訴外大野を代理人として原告に対し本件土地の賃借方を申込んだところ、原告は賃貸には異存がないが、権利金として三万円、地代は坪当り一ケ月金二十円という条件を提示したので、被告はその減額を希望したため金額未確定のまま推移して来たことが認められる。右認定の交渉顛末だけからいえば、通常の場合単なる賃貸借の交渉に止り、契約が成立したとはいい難いものというべきであるが、本件においては次のような特別な事情がある。すなわち、(イ)本件建物はもと原告の所有に属し昭和六年四月以来被告亡夫政一及び被告が原告から賃借し引続き今日まで居住使用していること及び昭和二十年十一月頃原告から被告にその買取方を申込んだことは当事者間に争がない。従つて被告が買取るにおいては原告はその敷地たる本件土地を相当条件を以つて被告に賃貸する意思があつたと認められる。(ロ)被告本人訊問の結果によれば、被告は当時原告の申込を承諾し代金二万八千円を原告に提供したところ被告主張のような経緯で被告との売買契約は履行されず、原告は他にこれを売却して了つたので右売買契約は原告の違約のまま自然消滅の形となつて了つていたことが認められる。(ハ)而して被告が井上から本件建物を買受けた後、前記のような交渉が行われた末、原告から調停の申立があり、その手続において本件土地の賃料額について接渉があり被告は坪当り一ケ月金二十円を主張したため妥結に至らなかつたことは原告本人尋問の結果によつて認められる。以上の事実を綜合すれば、原告は元来被告が長期間居住して来た建物の所有権を取得することにより本件土地を賃借使用することに異存はなかつたこと、被告が建物を買受けて原告に敷地の賃借を申込んだ際には原告はみずからの違約によつて被告との間の建物売買契約を消滅させていたため故なく被告の借地申込を拒絶することを敢えてしえない状態にあつたこと、従つてその後の調停申立においても主力を賃料額の協定においたと見られること等が優に推測できるものというべく、これ等の特殊事情を参酌すれば前段認定の原告と被告代理人大野との交渉により本件土地の賃貸借に関する基本的な合意は成立していたものであつて唯賃料額が確定せられず、且権利金の金額に関し折衝の余地が残されていたに過ぎないものと認めるを相当とする。即ち、原被告間には相当賃料額による賃貸借契約が成立したものであつて、その相当賃料額が客観的に明確にできないため双方の合意によつて確定し得ない場合は裁判上これを確定する外はない状態にあるに過ぎないというべきである。」

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